歯科訪問診療とは、外出が困難な事情がある方の元に歯科医が訪問して診療するシステムのことです。
一人暮らしされている高齢者の方には特に便利ですので、離れて暮らすご両親のために検討される方も多いことでしょう。
そこで気になるのは、やはり料金。
わざわざ来てもらうのはかなり高そうだと考えてしまいますよね。
でも実は、一定の条件を満たせば健康保険はもちろん介護保険も利用することができるのです。
本記事では、歯科訪問診療における介護保険の適用範囲と条件について解説していきます。
歯科訪問診療を受ける条件
まず前提として、歯科訪問診療を受けるには下記の2つの条件を満たしている必要があります。
①心身の状態から、自身での通院・外出が困難であること
②歯科医院から半径16km以内の自宅・施設であること
歯科訪問診療を受けられる対象は、自宅や施設で寝たきりの人や、自力での歩行が困難な人です。
認知症などの精神疾患により、通院が困難な人も含みます。なお年齢による制限はありません。
加えて歯科医院が自宅・施設から半径16km以内にあるという条件も付きます。
好きな歯科医院を指定できるというわけではないので、注意が必要です。
条件を満たしているかどうか判断が難しい場合は、まずは最寄りの歯科医院に問い合わせてみましょう。
歯科訪問診療にかかる費用の内訳
歯科訪問診療には、自宅まで出向いてもらうぶん、検査・治療費以外にもプラスアルファで費用が加算されます。
具体的な費用の内訳を以下に示します。
①検査・治療費
普通に歯科医院に通院した時と同様、検査・治療費がかかります。
具体的には、虫歯・歯周病治療や入れ歯の作成・調整などにかかる費用です。
金額については、検査や治療の内容によって大きく変動します。
なお普通に歯科医院に通院した時と同様、検査・治療費には医療保険が適用されます。
②歯科訪問診療料
歯科訪問診療には訪問診療料が別途かかります。
具体的な金額については、診療時間によって変動します。
対象となるのは診療の開始から終了までにかかった時間で、準備や後片付けにかかった時間は含みません。
③指導料
上記の2つの費用に加え、歯科医師もしくは歯科衛生士による指導料がかかります。
指導にかかった時間に加え、歯科医師と歯科衛生士どちらによる指導だったのかでも費用は変動します。
歯科訪問診療に介護保険は使える?
歯科訪問診療には介護保険が使えます。
但し、かかった費用の全てに適用されるわけではなく、介護保険が適用されるのは上記で説明した費用内訳の「指導料」に対してです。
介護保険を適用した場合の指導料の自己負担割合は0~3割であり、年金収入を含む本人の合計所得金額で負担割合が変動します。
具体的な負担割合については、要介護認定を受けた際に交付される「負担割合証」に記載されています。
介護保険を使った場合の費用例
医療保険と介護保険の両方を適用すると、負担する費用の内訳は以下のようになります。
検査・治療費 | 歯科訪問診療料 | 指導料 | |
負担費用 | 健康保険の
0~3割負担(※1) |
300~1,000円程度/1回 | 介護保険の
0~3割負担(※2) |
※1 健康保険の一般的な医療費の負担割合と同じ基準で算出されます。
※2 介護保険の負担割合は、年金収入を含む本人の合計所得金額で算出されます。
介護保険適用後の指導料の目安は400〜500円です。
介護認定を受けるには?
歯科訪問診療で介護保険を使うのであれば、事前に介護認定を受ける必要があります。
介護認定を受けていないと、歯科訪問診療における指導料は全額負担です。
介護認定の判定は、コンピュータによる1次判定と介護認定審査会による2次判定の2段階で行われます。
コンピュータで統計的な判断をした後、学識経験者が最終的な判断を下します。
判定にあたって評価されるのは、以下の5つの項目です。
①身体機能・起居動作
②生活機能
③認知機能
④精神・行動障害
⑤社会生活への適応
これら項目から、介護が必要かどうかを総合的に判断します。
介護保険の申し込みは、申請する本人が住んでいる市町村区の窓口から行います。
申し込み後、1次判定に向けた聞き取り調査の日程を調整。後日、市区町村の担当者、もしくは介護支援専門員が自宅に訪問し、聞き取り調査を行います。
まとめ
歯科医師に自宅まで出向いてもらうということで、一見高そうにも思える歯科訪問診療。
しかし実際は医療保険と介護保険の両方が適用されるので、金銭的な負担はそれほど大きくありません。
ただし具体的な金額は治療の内容などによっても変動してきます。
まずは歯科訪問診療が可能かどうかも含めて、最寄りの歯科医院に相談してみましょう。